06/12/21 地域医療支援中央会議 第1回議事録


第1回地域医療支援中央会議

日時 平成18年12月21日(木)
13:00〜
場所 東海大学校友会館「朝日の間」

○ 指導課長

 ただいまから、「地域医療支援中央会議」を開催いたします。私は医政局指導課の課長で佐藤と申します。どうぞよろしくお願いいたします。委員の皆様におかれましては、ご多忙中のところご出席をいただきまして、本当にありがとうございます。会議を始めるに当たり、最初に事務局から資料の確認をさせていただきます。

○ 医療計画推進指導官

 資料の確認をさせていただきます。資料1は「地域医療支援中央会議について」、資料2は「新医師確保総合対策」、資料3は「医療法改正および医師確保対策について」、資料4は「地域における医療対策協議会の開催状況等について」、資料5は「地域医療の現状、課題」です。参考資料1は「医療対策協議会における協議に基づく施策および実績について」、参考資料2は「臨床研修に関する調査報告のポイントについて」です。それ以外に、若干変更がありますが、後ほど説明します当初内示の資料があるかと思います。もし欠落等ありましたら、ご連絡いただければと思います。

○ 指導課長

議事に入る前に、私のほうからこの中央会議の委員の皆様のご紹介をさせていただきます。五十音順で申し上げます。社団法人日本医師会常任理事の内田健夫委員、全国医学部長病院長会議会長の大橋俊夫委員、学校法人自治医科大学卒後指導委員長(兼)地域医療学センター教授の梶井英治委員、社団法人全国自治体病院協議会会長の小山田惠委員、千葉県病院局長(病院事業管理者)の近藤俊之委員、全国厚生農業協同組合連合会経営管理委員会会長の武田弘道委員、宮城県病院事業管理者の久道茂委員、社会福祉法人恩賜財団済生会常任理事の松原了委員です。独立行政法人国立病院機構理事長の矢崎義雄委員ですが、本日はご欠席ということで代理として同じ国立病院機構の医務担当理事の鈴木英明参考人です。日本赤十字社事業局長の山田史委員です。参考人として、全国衛生部長会副会長の中村健二さんです。このほか、オブザーバーとして文部科学省医学教育課の三浦課長、同じく総務省自治財政局地域企業経営企画室の和田室長です。(本日、和田室長が急遽欠席のため宿谷室長補佐です。)

続きまして、事務局を担当する職員を紹介いたします。医政局長の松谷です。同じく医政局審議官の白石です。同じく医政局参事官の上家です。医政局総務課長の二川、企画官の中村は所用で遅れております。医療計画推進指導官の針田、医政局医事課長の栗山、同じく医事課医師臨床研修推進室長の宮嵜です。看護課看護職員確保対策官の小野です。医政局国立病院課長の関山です。同じく国立病院課国立病院機構管理室長の堀江です。政策企画官の梶尾です。最後になりましたが、私は医政局指導課長の佐藤です。よろしくお願いいたします。

 事務局を代表して、松谷医政局長からご挨拶を申し上げます。

○ 医政局長

医政局長の松谷でございます。委員の皆様方には大変お忙しい中、地域医療支援中央会議の委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。また、本日は大変ご多用のところお運びをいただきまして、重ねて御礼を申し上げる次第でございます。

かねてから課題となっております地域の間、あるいは医療の各診療科の間、さらには病院・診療所間における医師の偏在、あるいは医師の不足という問題については、大変大きな課題だというように厚生労働省としても受け止めて、対策をしているところです。今日ご出席の委員は、この関係でそれぞれお働きになっている方々ばかりですので、既にこのことについてはいろいろ考えを目指していらっしゃるのではないかと思っておりますが、こういう場においてそれぞれの知恵を結集して、この課題に当たっていきたいと、私どもとしては考えております。

先般の通常国会において医療制度改革が行われたところですが、この中でも医師不足の対策として、法改正が必要な事項についての対応がとられたところです。具体的には、都道府県に医療対策協議会を設けていただいておりますが、これを医療法上制度化して、都道府県を中心とした医師確保対策についての法律上の位置づけがなされたわけです。また、これと併せて小児救急医療、産科医療等については、この4月に診療報酬のマイナスの改定がありました。この中で、これらのことについては診療報酬上重点的なプラスの評価がなされるなど、その取組みの充実を図ってきたところです。

国会審議の中でも、それぞれのお立場からさまざまなご指摘をいただいているところです。一昨年来、厚生労働省のみならず、地方団体を所管している総務省、大学等を所管している文部科学省、3省で連絡会議を設けて、これについて対応を図っているところです。昨年の夏に医師確保総合対策をまとめたところでして、今般の制度改正、あるいは診療報酬の改正といったことは、その対策の具体化ということになります。

3省引き続きさらなる対策ということで、本年8月にも新医師確保総合対策ということで、新しい対策を進めたところです。この中で、都道府県のみでは対応困難な地域に対する緊急対策として、厚生労働省に地域医療支援中央会議を設置して、医師確保を含めた地域医療を支援するための方策を検討することが盛り込まれているところです。予算上は来年4月から法律の施行等もありますが、これについては緊急を要することから、年内、今日も前倒しでスタートしたところです。医政局長の下にこの会議を設置して、全国的に医療を提供している組織の代表で、非常に高い識見を有しておられる委員の皆様方にご参集いただき、ご検討をお願いする次第です。

一口に医師確保と申しましても、各都道府県、あるいは各市町村それぞれさまざまな事情があり、程度の差もあるわけです。都道府県を中心とした医師確保対策については、それぞれの地域の状況を踏まえた対応が必要なわけですが、いろいろなそれぞれの取組みもあります。その中には大変良い事例もありますので、そういうものを収集・分析をし、その結果を改善方策として提示するといったことも大変大事な取組みだと思っております。そういうことなどを含めて、都道府県の取組みを国としても支援していきたいと考えているところです。

また、本日はお手元の資料で参考として来年度予算、昨日当初予算の財務省原案の内示があったところで、その概要をお配りしております。来年度予算、あるいは今年度の補正予算においても、それぞれの医師確保に関する対応をしたところですが、これらを踏まえて、さらにこの会議の検討を踏まえて進めていきたいと考えているところです。

医療計画制度について、先般の制度改正の中で大きな改正があったところはご承知のとおりです。都道府県ごとに知事が5年ごとに医療計画を立てるわけですが、がん、脳卒中といった4つの疾病、小児救急、あるいは周産期といった5つの事業、4疾病5事業について、医療計画の中で、それぞれの地域での医療機関のネットワーク化を進めることとしているところです。医療機関のそれぞれの機能に応じて、機能の分化・連携を図って、発症から在宅に戻るまでの流れを大変スムーズにするということで、これらの疾病事業に応じて、地域ごとに連携体制を組んでいただくこととしたところです。

本日お集まりの全国レベルの各病院グループについては、それぞれの病院がそれぞれ各地域で地域医療を担っていらっしゃるわけですが、その地域でどういう働きをするのか、どういう役割を果たすのか。その位置づけをお考えいただきながら、それぞれのグループごとに医師の確保を図っていただき、それぞれの地域、それぞれの都道府県における拠点の病院として、医師の派遣をする、あるいは派遣ができるような体制をとっていく、あるいは相談に応じるような体制をとっていくという発想をしていただきたい。

いままでは大学病院1本で、それも大学病院のある意味で自主的な活動として行われてきたわけです。大学病院はもちろん大きな資源ですが、地域にとってはいろいろな拠点を設けて、これからはもっと有機的な対応として、医師の資源としての活用を図っていくことが大事だということです。そのための討議を当中央会議でも行って、前向きの施策をしていきたいと考えておりますので、是非この点ご理解、ご協力をお願いしたいと思っている次第でございます。

 医師確保については、1つの手段でパッと解決するような妙薬というのがありません。予算上のこと、制度上のこと、診療報酬上のこと、あるいは地方のいろいろな施策といったことが、それぞれ各般にわたって必要です。その中で、お互い知恵を出して、解決の方向で努力をするというやり方でこの会議を進めていきたいと思っておりますので、是非ご協力をお願い申し上げたいと思います。若干長くなりましたが、本日の会議の趣旨を踏まえて、冒頭のご挨拶といたします。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○ 指導課長

 事務局を務めます医政局総務課総務課長の二川と企画官の中村がまいりましたので、
ご紹介申し上げます。

それでは、この会議の座長について、お諮りします。委員の皆様方には事前にご相談をさせていただいておりますが、宮城県病院事業管理者の久道委員に座長をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

(異議なし)

○ 指導課長

 異議なしということですので、久道委員、座長席にお移りいただきますようお願いいたします。座長にご挨拶をいただきましたあと、以降の議事進行をお願いしたいと存じます。

○ 久道座長

ただいま皆様のご賛同を得て、この会議の座長を務めさせていただくことになりました。一言ご挨拶申し上げたいと思いますが、いま日本中、特に地方の医療は崩壊しつつある、もうしているところがあるわけです。そのことによって、地域の住民、医療関係者も悲鳴をあげているという状況ではないかと思うわけです。そのような中、この医政局の中で地域医療支援の中央会議を作って、みんなでいろいろ工夫しようということになったわけです。いま局長からもご挨拶がありましたように、この中央会議では地域医療の確保に関して、広域的な視点から、都道府県の取組みを支援するということで、委員の方々それぞれの立場から忌憚のないご意見を伺って、良い方向に持っていければと思います。どうぞよろしくお願いしたいと思います。

議事に入る前に、手続論です。委員欠席の際の手続ですが、代理出席される方の取扱いについてお諮りいたします。既に先ほど紹介されているのですが、本中央会議においては事前に事務局を通じて座長の了解を得ること。また、当日の中央会議において承認を得ることにより、参考人として発言をいただくことを認めることにしたいと思います。さらに、事務局が必要と判断した場合、事前に座長の了解を得て、中央会議に参考人を招集することについて認めることにしたいと思います。以上のような取扱いでよろしいでしょうか。

(了承)

○ 久道座長

 どうもありがとうございます。そのようにさせていただきます。議事に入ります。事務局から本中央会議の趣旨および当面のスケジュールについて、説明をお願いいたします。

○ 医療計画推進指導官

事務局より、資料1から資料4まで続けて説明いたします。資料1ですが、この地域医療支援中央会議の趣旨について書いてあります。今年の8月31日に地域医療に関する関係省庁連絡会議(厚生労働省、総務省、文部科学省)により取りまとめられた新医師確保総合対策において、地域医療の広域的な支援をするために全国的な病院ネットワークを有する公的医療機関の代表者からなる中央会議を開催するといったことが書いてあります。その中で、国において地域医療の確保に関する好事例の紹介や改善方策の提示など、広域的な視点で都道府県の取組みを支援する仕組みを考えていくといったものになっております。次の頁に構成員のメンバー表が付いております。

資料2はいまお話させていただいた新医師確保総合対策、今年8月に取りまとめられたものです。カラーのA3の紙が概要ペーパーになっており、次から個々のことが書いてあります。右側ですが、短期的対策と対応ということで、平成19年度概算要求の反映として、医局に代わって都道府県が中心となった医師派遣体制の構築。1つ目の○は、県が中心になった医療機関等が参画する協議会、都道府県の医療対策協議会のことが書かれています。2つ目の○は国レベルでの病院関係者からなる中央会議、本会議により都道府県の医師派遣などの取組みをサポートしていくといったものを書いてあります。3つ目の○は、小児救急電話相談事業、いわゆる#8000といったものの普及・充実です。4つ目の○は、小児科・産科をはじめ、急性期の医療をチームで行う拠点づくりとして、集約化・重点化を都道府県を中心に推進していくといったものが書かれております。

長期的な対応としては、医学部卒業生の地域定着を図るための地域枠の話、医師不足深刻県における暫定的な定員増の話。また、自治医科大学の暫定的な定員増の話が書かれております。これが8月に取りまとめられた新医師確保対策の概要になります。

資料3は全体像の取組みの資料になります。良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の概要といったところで、今年の6月に成立した改正医療法のときの資料になっており、概要として1から7まで、情報提供等が書かれております。施行日は来年の4月1日を基本として行われるといったものが書かれております。

次の頁は、いまお話した7つの項目を詳細に書いているものです。1つ目は医療機能情報の提供制度の創設で、医療機関が一定の情報を届け出て、都道府県に報告していただいて、インターネット等でわかりやすく提示していく。また、医療安全支援センター等において、相談・助言をしていくといったスキームをつくっていくといったものが書かれています。

医療計画の見直し等を通じた医療機能の分化・連携の推進として、がん、脳卒中、小児救急対策などの主要な事業ごとに医療連携体制をつくって、医療機関の相互の連携の下で適切な医療サービスが切れ目なく提供される体制をつくり、早期に在宅生活に復帰できるような仕組みを取り入れるといったもので、地域連携クリティカルパスの話、国がビジョンを示す、またわかりやすい指標、数値目標などの仕組み、医療連携体制を具体的に明確に位置づけて、住民・患者に明示する仕組みなどを書いております。

次の頁は、いくつかの事例を挙げております。がん診療の連携のイメージといったところで、がん診療連携拠点病院の概要ペーパーになっております。下は脳卒中、次の頁は小児救急とそれぞれ事業によって異なる形、地域によって異なる形があろうかと思いますが、1つのモデル、参考としたイメージを付けております。

4頁の下は医療対策協議会のことが書いてあります。都道府県が中心となって、地域の医療関係者と協議を行う場として、この医療法の中で法定化された仕組みになっております。これには特定機能病院や公的医療機関等と関係医療機関の方々に参加していただいて、都道府県の医政担当部局などを含めてご議論をいただく。そして、地域でどのような医者がいて、どのような医療ニーズがあるのかといった現状分析をしたり、短期的、中長期的な体制のあり方についてのコンセンサスの形成、また都道府県が主体となった医師派遣の調整などを行っていただくものになっております。

5頁、6頁は医療安全の考え方が書かれております。また、医療従事者の資質の向上、医療法人制度改革、有床診療所のことが書いてあります。これは6月に成立した医療法のことになっております。

7頁からは医師確保対策についてです。8頁に折線グラフがありますが、人口10万対医師数の年次推移が書かれております。マクロ的なものですが、毎年3,500人から4,000人、オールジャパンで増えているといったものになっております。下の表は都道府県別に見た人口10万対の医師数です。実際に昭和61年と平成16年を見比べて、都道府県でどうなっているのかをお示ししたものです。全県で総医師数は増えており、大都市、例えば東京都、大阪府のような所が特別伸びているわけではなく、むしろ全国を下回っているといったものがわかる表になっております。

9頁の上は二次医療圏別人口10万対の従事医師数です。全国的にもいろいろ数は違うのですが、都道府県内における医師の数はそれ以上に差が出ており、例えば北海道ではいちばん多い上川中部地区で人口10万当たり280人ほどいるのですが、根室のほうでは100人を切っている数で、県内格差は3.0ぐらいになっているといった形になっています。各県それぞれ多い所、少ない地区を書いて、その差を取りまとめたものになっております。県庁所在地などで、比較的医師が多く、また郡部などに少ない傾向が見られている表になっております。

下の表は小児科の話で、小児科医師数と小児人口、1万人当たりの小児科医師数を書いております。マクロですが、オールジャパンで小児科医の数は増えている。また、ここにはありませんが、ほぼすべての都道府県で増加している傾向があります。

10頁は産婦人科医師数ですが、これに関しては出生数当たりの産婦人科医の数については横這いになっていることを表している図になります。産婦人科医の数は減少をしているという形になっております。下は具体的な都道府県別の数を書いております。

11頁は分娩実施施設数の変遷ということで、分娩施設での分娩数ですが、診療所・病院、いずれにおいても施設の数については減少傾向が見られているということが書いてあります。下の病院・診療所の勤務医師数の変化に関しては、病院の勤務医、また診療所の勤務医ともに増えているといった形になっております。病院で1万人、診療所で9,000人となっておりますが、全体数のバランスからいくと、病院勤務医の割合が64.6%から63.8%で、全体像からいくと減っております。しかし、病院も診療所もともに増えている、むしろ病院のほうが数的には増えている表になります。

12頁は都道府県別の勤務医の変化で、病院の勤務医の数、診療所の医師の数のそれぞれの増減を書いてあります。県で非常に大きなばらつきがあり、病院がたくさん増えたり、診療所が増えたりしており、県によって事情が異なるといったものが示されております。下は年齢別の小児科・産婦人科医の男女比で、産婦人科に関しては若い世代の医師で女性の数が非常に増えているといったものが示されております。

 13頁の上は、大学卒業後5年から10年のところで、女性の就業率が若干下がって
いることを示したグラフになります。

13頁の下から取組事例になりますが、医師派遣機能に関する取組みイメージとして、これまで大学がかなりの部分背負って医師の派遣等をやっていただいた状況があったと思うのですが、今後は大学以外の地域の医療機関も、医師のキャリアアップの面等を含めて派遣するスキームが必要ではないか、といったものを書いた図になっております。

14頁の上は、小児科・産科の配置のイメージです。それぞれの医療機関に地域医療を頑張っていただいているのですが、それぞれが連携をとって、また拠点づくり、連携を構築して、地域の医療のレベルを上げていく。拠点病院から医師を派遣する仕組みは、拠点病院ではハイリスクなもの、分娩等ができるようになりますし、派遣されるほうに関しては一般的な小児医療や分娩前後の診療等をやっていただく。そういう役割分担・連携を強化していったらどうかというイメージ図になっております。下は#8000を全県にやるとか、深夜帯への対応も充実する、携帯電話への対応も充実するというものを書いた表になっております。

 15頁の上のほうは先ほどもありましたので、省略しますが、15頁は中央会議、この
会議の概要図になっております。

16頁に具体的な医療資源の集約化の例として、2点ほど書いてあります。上のほうは北海道の中空知地区といった所の医療機関の話で、各市立病院に1人か2人ずついた産婦人科の先生に1カ所に集まっていただいて、これまで過重な労働環境があったとか、医師の確保が困難だったものが1つにまとまることによって安定的に医療ができるようになってきて、さらにいままでできなかった未熟児の診察も可能になったものを示した図になっております。

下のほうは大阪の豊能地区において、夜間における小児治療の集約化です。各病院で1名ずつの小児科医がずっと小児医療をやっていたのですが、豊能広域こども急病センターを設置して、そこで一次医療を担当し、ほかの市立病院に関しては、より入院が必要な患者などに対応するという役割分担をしたものになっております。

17頁は医師の派遣の取組みですが、長崎県がやっているドクターバンク事業です。1度県の職員として採用して、2年間を1単位として、1年半を離島で勤務していただいて、残り半年は自主研修をやっているといったスキームです。また、支援サポートとして、長崎医療センターが技術的な支援をするという仕組みをつくって、地域医療を支える仕組みをつくっている事案です。似たような事例として、宮崎県のものを書いております。

最後の頁は地域枠の資料になっております。いくつかの大学で地域枠をとっており、地域枠の数がどんどん増えているといった表になっております。

資料4は地域における医療対策協議会の開催状況で、都道府県別の会議、協議会の名称および開催回数で、11月末現在の数を書いていただいております。具体的に何をやっているかも書いてあり、(1)は医師の派遣や紹介などをやっている所、(3)はドクターバンクのようなものを創設し拡充している所、(5)は奨学金制度を設けている所というようにいくつかあって、各県別の取組み状況を書いた表になっております。細かいものに関しては、参考資料1として各県別の資料を付けておりますので、ご覧いただければと思います。

次の頁は小児科・産科における医療資源の集約化・重点化のフォローアップ調査の速報のようなものです。小児科・産科の医療資源をどうするのだとずっと都道府県で検討していただいておりますが、その経過を聞いたものを取りまとめたものになります。3の回答結果ですが、検討を終了した所が4県、現在検討中が43県という形になっております。また(ハ)の課題としては、医師の確保も必要だということが書いてあり、市町村等関係者間の調整が困難であるということを言っている県がある。これが1枚紙になっております。

続きまして予算の関係です。昨日の当初内示の資料を参考配布しております。当初内示ですので、まだ数字の変更はあります。上から、平成19年度の当初内示の額、平成18年度の残額、その差、対前年比が書いてあります。その下の(注)の所に、厚生労働科学研究費補助金129億円とありますが、これは138億3,700万円になっております。訂正をお願いできればと思います。まだ数字の変更があるかもしれません。これが昨日の当初内示のものです。

次の頁は医師確保対策の推進として、平成18年度の当初予算額41億円が平成19年度当初予算額92億円といった形、また平成18年度補正予算案として8億円、合わせて41億円から100億円といった形になっております。併せて、地方財政措置としても医師確保にかかる地方単独事業分の事業等として措置されているということになっております。医師確保対策予算として具体的な内容としては、県の医療対策協議会に関すること、この中央会議新設に関すること、医療対策協議会の計画に基づく派遣に協力する病院への助成、拠点病院の活用、いわゆるマグネットホスピタルといったものの活用、地域医療の確保を図るための先駆的事例、モデル事業に関するもの、奨学金、その他等々書かれております。

 次の頁は、開業医の役割の強化として、開業医が参画しやすい仕組みのような形で小児救急センター、また患者・住民の啓発に関しては先ほどお話した#8000の拡充などが書かれております。ネットワークづくり、拠点となる病院づくりに関しても、小児科・産科のネットワークのための連携病院の整備費用の助成、小児救急病院における医師等の休日・夜間配置の充実、臨床研修において医師不足地域や小児科・産婦人科の重点的な支援、出産・育児に関する女性の医師の多様な就業の支援、助産師の活用などがあります。また、患者のアクセスの支援としては、離島等アクセスが悪い地域の患者が拠点の病院を利用するための宿泊施設の整備。また、離島巡回診療ヘリ運用事業の新規創設といったものなどがあります。上には、分娩にかかる救済制度、医療事故防止にかかる死因究明制度などが出ております。それ以降もう少し細かいものが出ております。以上、事務局で用意した資料を一括して説明させていただきました。

○ 久道座長

 ただいまの説明について、皆様からご質問なり、ご意見をいただきたいと思います
が、いかがでしょうか。

○ 小山田委員

 資料4についての質問ですが、各県別に開催されている医療対策協議会はどういう状況か、(1)から(5)までと書いてありますが、実際にどの病院に集約する、あるいは集約する必要はないということが、これではちょっとわからないと思うのです。もちろん、例えば小児科・産科の集約化についても、強制的ではなくて、本当に必要な所で協議されているのかどうか。私が拝聞している所によると、具体的にどの病院に集約する必要があるか、ないかというところの議論がなされているのは少ないようなのです。そうしたことはわからないのでしょうか。どの県が、具体的なマップを作って集約しようとか、あるいはやる必要はないなどということです。これは平成18年度、遅くとも平成20年度までに医療計画の中に明記することになっているのですが、こうした具体的な議論の進行状況はわからないでしょうか。

○ 医療計画推進指導官

 ご承知のとおり、平成20年4月からつくられる医療計画に向けて、小児科・産科についても、いま検討が進められているところです。各県から話を聞くと、実際にヒアリングといいますか、具体的にどうしていくのかという意見を聞いており、まだすべての方々の合意を得るという段階ではない状況です。まず、やるかやらないかをやって、次にどうするのかと、手順を追いながら新しい医療計画に向けて、いま作業に入っています。その中間のフォローアップの段階ですので、各県で細かいところまですべて決まったというわけではなくて、いまはわからないといいますか、その段階ではないといった形かと思います。

○ 久道座長

 いまの小山田委員の質問は、資料4の2枚目の細かい各県ごとの。

○ 小山田委員

 各県の開催状況がありますね。これは1、2、3、4、5とありますが。

○ 久道座長

 具体的な取組みで、そこですね。

○ 小山田委員

 はい。

○ 松原委員

 予算資料の平成19年度内示の概要の所の見開き1頁目、「医師確保対策の推進」の1の「医師派遣についての都道府県等の役割」云々の所です。2つあって、○の3番目と4番目です。医療対策協議会の計画に基づく派遣に協力する病院への助成と拠点病院についてです。助成について、予算化がこれはまだ始まったばかりなので、具体的なことはあまり決まっていないとは思うのですが、どのような考え方で、例えば額とか単価とか、単価までいいませんけれども、どの程度の規模でどういう形で助成をするようなアイディアなのかということが1つです。それから、マグネットホスピタルというのは、いろいろな情報で何となくイメージは承知しているのですが、少しこの辺についての厚労省の考え方を教えていただきたいのと、この拠点病院というものをどのように特定していくのかという辺りについて、ご説明いただきたいと思います。

○ 医療計画推進指導官

 前者ですが、医師確保推進事業ということで、新規で7億強のものがあり、小児科医師等の確保が困難な地域を中心に都道府県の医療対策協議会において、医師を確保しないと地域の医療に支障が生じるなど、医師派遣を決定したものを対象に都道府県が具体的な取組みについて必要な支援を行うといったものです。うまく説明できなくてすみません。一応、対象箇所数としては47カ所、都道府県、補助率2分の1、積算単価が1カ所で3,000万円の予定のものを考えております。

○ 久道座長

 わかってくれましたか。もう1つありましたね。

○ 医事課長

 マグネットホスピタルですが、これは病院における研修の中で、具体的なイメージとしては後期研修、専門研修などを想定していただくといいと思うのです。その研修をする過程の中で、ローテーションの1つとして地域の病院にも派遣する。そういうことによって、地域における医師を確保していく、あるいは地域の病院で従事する医者が、大都市の先進的な医療を行っている病院に、ある一定期間研修ができるように、というプログラムを組んだ場合に助成すると。いずれも研修事業に対する助成を考えております。具体的な対象、方法等についてはこれから検討してまいります。

○ 梶井委員

 自治医大の梶井でございます。医師確保対策の所の表なのですが、小児科医、産婦人科医の問題はもう皆様ご承知で、よく報道されているとおりですが、いま医師確保でいろいろなテーマがあると思うのです。その1つに中核病院から医師がいなくなっているという大きなテーマがあると思うのですが、そこは内科医が非常に問題となっております。ですから、何かそういう資料があるといいと思いました。

○ 久道座長

 中核病院から取った立ち去り型サボタージュではなくて、最近は集団脱走という表現まで出てきておりますが、そういうことの資料ですか。

○ 梶井委員

 はい。

○ 久道座長

 わかりますかね。

○ 医療計画推進指導官

 いま手元にありませんので、次回以降、準備させていただきたいと思います。

○ 梶井委員

 中核病院の定義ということでしたが、これはどこが中核病院かという定義に基づいてというよりも、どの病院でどのような現象が起こっているかがわかれば、いまの問題に対する1つの方向付けになるかと思います。

○ 近藤委員

 近藤でございます。地域によって200床ぐらいでも中核病院と言ったりするのを、私は新聞か何かで見た記憶があるのですが、医師の充足率を見ると、医師の多い所ほどそれほど悪くない。つまり、小さい病院ほど医師確保が難しいという話で、どの辺の病床数の病院の医師が減っているのかです。医師確保の問題と病院の大きさといいますか、その関係が出てくるのではないかと思います。先ほど小児科・産科の集約の話が出ましたが、当然、小児科医と産科医がある数がいなければいけません。先ほど梶井委員がおっしゃったように内科でも集約が必要ということは、内科が非常に細分化されたため、結局それぞれの内科にかなりの数がいないといけない。少なくとも循環器なら3人以上いなければいけないとか、消化器も3人以上いなければならないというようになってきます。そうしますとかなりの医師を抱えている病院でないと、中核病院と言えないのではないかという気がしました。

○ 久道座長

 いまの件の資料は、次回に集められるときには是非出していただきたいと思います。次に地域医療の現状・課題について、全国衛生部長会副会長の中村参考人から説明をお願いしたいと思います。

○ 中村参考人

全国衛生部長会の中村と申します。衛生部長会は昔は衛生、民生と県の組織が分かれておりましたが、今は保健医療を担当している都道府県、また政令市の部局の集まりということで、情報交換会をしているグループです。今日は座長のお許しをいただき、発言の機会をいただきましたことを感謝申し上げます。地域医療の現状と課題について説明ができればと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。

スライドも用意しましたが、お手元にも資料5として紙の資料を配付しておりますので、併せてご覧いただければと思います。「医療の状況」ということで、都道府県別の医師数を並べているグラフです。いちばん少ない埼玉県と多い所と2倍ぐらいの差があります。その下の図ですが、二次医療圏ごとにプロットした図です。先ほど事務局からも説明があったと思いますが、縦軸と横軸、それぞれ人口10万対がX軸で、面積割がY軸です。東京区の中央部では、この枠を通り越すぐらい医師が集中しておりますが、一方、面積割で少ない東北、北海道では100を切る。Y軸を見ると1〜10とか、少ないところは東北、北海道の二次医療圏が該当しております。また、人口10万対割で100前後のところで結構人口が多い部分は、千葉、愛知、埼玉、宮城、茨城というグループで、人口の多いところの二次医療圏で医師数が少ない場合には、このようなところに分布をしてくるという状況になっております。

このような状況で、実際に医療圏がそれぞれ救急医療や小児救急または周産期医療について十分かどうか、肌で感じる深刻度についてアンケートを取ったものです。深刻、やや問題というところは、救急医療はこの程度です。小児救急については3分の2近くはやや問題、または深刻ということで、周産期医療についても同様の状況です。共通しているところは、中核的病院の勤務医の不足ということですが、大都市と地方都市で少し意味合いが違っております。大都市では医療機関数、医師数は多いのですが、患者も非常に多いと。1カ所閉鎖すると、次々と影響が波及するという問題を抱えております。役割分担、特に初期と二次救急をうまく連携していくことが課題です。

一方、地方都市の場合は、医療機関数、医師数はもともと少なくて、大学から大都市のほうに引き上げたりすると、たちまちアクセスが極端に悪化してしまう。医師数の増加そのものが課題になってくるということです。

次は研修医の状況です。2年の研修が終わって、3年目の研修医が各都道府県にどう分布しているかというものです。ここは100、200のラインですが、北海道、東京、神奈川、愛知のように、100を超えているところがあります。100の真ん中よりも少ないラインは、大学・研修病院を合わせて30名前後しか確保できていない県がかなりたくさんある、ということがおわかりいただけると思います。

次に診療科の状況です。今度の研修制度が始まったことによって、いまの診療科の医師の分布が今後変わるかどうかを見ようとしたものです。この青い棒グラフは16年の三師調査で30代の医師がどの診療科に分布しているかという図です。緑の棒グラフが3年目の研修医の診療科です。それぞれ割合を縦にして、診療科ごとに比較したものです。例えば内科は、いまの30代の割合と3年目の研修医の割合はほぼ同じ、というように見ていただければと思います。これを全体で見ると、形成外科、麻酔科の伸び率が大きい、内科、産婦人科はほぼ不変、小児科、外科はやや伸びておりますが、これをさらに県別で見るとばらつきがかなりあるという状況です。

都道府県の医師確保対策については、先ほど事務局からいろいろお話があったとおりです。いまそれぞれ取り組んでおり、平成17年度までに取り組んだものが下の棒グラフ、平成18年度に新たに取り組んだものがその上に重なっておりますが、これは都道府県の数を表したものです。これまでへき地対策や産科・小児科医師確保対策にかなり取り組んでいる。また、医学部の学生向け、卒後臨床研修向けに取り組んでおりましたが、平成18年度に入って、特に都道府県が取組みを着手しているところとして後期研修支援、女性医師支援が前年からかなり増えてきているということです。

また、集約化・重点化の取組みを医療対策協議会において進めるということですが、既に検討協議中ではあっても非常に困難、または困難というところを見ますと、小児科集約化11県、産科集約化13県、医師確保対策31県、大学からの派遣の協議調整7県と、少なからぬ県が協議を進める上で困難と感じているところです。その主な理由ですが、そもそも集約化するだけの医師がいない。また、派遣元の大学が複数の都道府県から県に来ていただいて跨がっている。出身医局の異なる医師を1カ所にまとめることは調整が非常に難しいものがある。さらに、縮小される病院周辺の地域では、地元住民、自治体の理解が得られにくい。公立・公的病院が少ない地域、また病院の経営戦略の相いれないというところも理由になっているということです。

そういう中でうまく集約化といいますか、結果が出ている3県の事例について説明します。先ほども事務局から説明がありました中空知、南空知の例です。圏域は空知を中心とした6市5町です。少しイメージを持っていただくのにこの数字が役立つかと思いますが、人口16万1,000人、面積は2,438平方キロメートルと非常に広大な地域です。この地域に開業医1施設、この3市立病院があります。滝川と美唄の市立病院については産婦人科は1名しかいないという状況です。

この状況においての問題として、1名体制の病院は負担が過重であるという観点から、北大から砂川市立病院に集約化したいという提案をしました。滝川、美唄はセンターのサテライトという形で体制を組み直したいという提案がされわけです。こういう提案に対し道としては、そういう大学からの提案があることから、関係自治体に協議会を設置して説明し、地元医師会にも説明し、市町村にも同じく説明しました。その際に大学が先頭に立って関係協議会で説明しました。医師会関係病院は、その協議会の場に参加するということです。これは推進するほうの立場です。

住民は、集約化された後も滝川、美唄の病院では産科の再開について要望が強くあります。集約化された砂川病院では患者さんが集中する関係から、内科ベッドを転床して産科のベッドを増床し、この地域の産科医療を立て直しました。

これは、先ほどご紹介があった大阪府の豊能医療圏の例です。先ほどの人口規模に比べるとこちらは100万人、面積は275.71平方キロメートルです。人口は7倍ぐらい、面積は8分の1ぐらいの所です。

ここは小児科の問題がありました。時間外の小児救急患者数が、市立池田病院、市立吹田病院、箕面市立病院、市立豊中病院、済生会吹田病院で、こういう数字になっています。これは平成12年の実績です。このころから問題意識を持ったわけです。

この圏域内4市立病院、1民間病院の小児科当直体制が、いずれも医師1名で過重労働でした。各市の休日夜間救急診療所も小児科医師不足のため維持が困難で、勤務医が疲弊して退職し、欠員になって、また負担が増えるという悪循環をきたしていました。供給をしていた大学の入局者数も63人から48人と減少の一途を辿っていることから、地域として何らかの対応をしなければいけないということでした。

結論から申し上げると、豊能広域こども急病センター設置の構想をまとめました。まとめるにあたっても市立病院を拠点化したらどうかなど、さまざまな意見を集約する手続が必要だったと聞いていますが、まずセンターを設置することの合意形成を図りました。具体化にあたり保健医療推進協議会を設置し、このセンターの構想が平成13年、実際に運営ができたのは平成16年4月からです。

診療日を見ていただくと、平日は午後7時から午前7時、土曜日は午後3時から午前7時、日曜祭日は午前9時から午前7時ということで勤務体制を組み、これは曜日割り、時間割りで大学病院、循環器病センター、地域医師会から協力いただいて81名の方に登録いただき、そのうち38名の方が地元の開業医の方です。施設は箕面市にある医療保健センターに集約化し、ここで一次医療を担います。開設者として負担金は2分の1で、府が2,000万円を上限として補助します。他の市町村は人口割り、患者実績割りで運営金を出す構造でやっています。

3番目が三重県の例で2つ用意しました。1つが平成17年、もう1つが平成18年のものです。(1)は平成17年で三重県東紀州医療圏の例です。ここは人口8万5,000人、面積は991平方キロメートルです。この地域の中核病院が紀南病院と尾鷲総合病院です。この地区は日本有数の多雨地域で、幹線道路が通行止めになることも年数回あるそうです。この2つの病院の距離は約40kmも離れています。

ここで重点化・集約化が課題になったわけですが、大学医局の産婦人科医師数が減少し、ここにありますように75人、68人、58人と年々減ってきました。医療事故を防ぐ観点から集約化したいと大学から提案がありました。尾鷲総合病院から紀南病院に集約化という提案です。

次の頁をご覧ください。この提案に沿って紀南病院は産婦人科2名体制から3名体制になります。引き揚げた尾鷲総合病院については独自に産婦人科医を確保しましたが、確保するまでは紀南病院から週2回、外来の応援をしていただいたということです。大学からこの間、病院間の調整をしましたが、住民としては先ほど人口8万5,000人と申し上げましたけれども、紀北地区に産婦人科医の存続をという署名が6万5,000人分集まりました。平成17年の段階では、三重県の医療審議会にこういった検討分科会が設置されておらず、公式な協議会での活用はされなかったとのことです。

(2)は平成18年ですが、同じく三重県の南勢志摩医療圏で同じような例がありました。ここは人口25万9,541人、面積は914平方キロメートルです。ここの中核病院が記載の3病院です。大学医局の産婦人科医師数が平成17年は58人と説明しましたが、平成18年も同じ減少傾向にあり、同じように医療事故を防ぐ観点から県立志摩病院の派遣を見直し、山田赤十字病院に集約化したいという大学からの提案です。この集約化を図ると志摩地域の遠い所からは山道を車で1時間半もかかりますから、地元医師会、周辺住民、また県立志摩病院からもいろいろ反発、異論があったそうです。

そういう中で、まず県は医療審議会に検討の場を設けました。8月、9月にかけて3回の検討会を開催しています。また地元の方々の理解を得る観点から医療機能分化シンポジウムを開催しています。県、県産婦人科医会、日本産婦人科学会三重地方会が主催し、住民の方々に現状をご説明するというものです。そのほか県として、大学、市、病院、医師会等との調整をしたということです。市町村は、どういうふうに構想が動いているかを周知し、大学は県と病院との調整を行うといったことです。病院は、集約化された所から県立志摩に週2回、外来を開設しています。一方、住民は存続を求めて2万人の署名が集まり、集約化後も再開の要望が引き続きあるとのことです。

このように、いろいろ都道府県は取り組んでいるのですが、どうしても医学部の設置場所、または研修に魅力的な病院の都市偏在などがあって地方は不利です。また診療科についても、勤務の過酷さとそれに見合う報酬というか、報酬格差があるのではないか。医療事故の問題でも診療科の選択に影響を与えている。病院勤務か開業かについてもいろいろ情報をとって進路選択していて、こういう問題を都道府県が取り組んでいる環境整備、地方間競争促進だけでは、なかなか対応が困難だということです。もちろん取り組みますけれども、中央レベルでの関係者の協力と制度的な対応が必要です。特に都市部で国民に対して新しい健康知識、初期対応技術、医療のかかり方についても、啓発していく必要があるのではないかと考えています。

国レベルでこういうところに取り組んでいただきたいと考えていますが、具体的には、例えば大学については地域医療への協力方針を明確化していただくとか、医局所属以外の医師についても研修機会を与えていただけないか。地域を基盤とした研修ネットワークが大学を中心にできないか。

病院・病院団体への期待としては、勤務医の勤務環境の改善、またクラーク、補助者等の積極的な活用、さらに地域を基盤とした研修ネットワークを形成し、ここが大学との連携を特にしていただきたいと考えています。あと同一系列病院にいろいろ医師を派遣する場合も、単独勤務で「行ってらっしゃい」ではなく、期限付きでちゃんと計画的に交代するようなシステムをしていただけると、離脱も少なくなると考えています。

医師会も初期、二次の連携体制についてご協力いただき、さらにかかりつけ医の調整機能の向上とか、生涯教育の環境整備をお願いできればと思います。

学会についても、医師不足分野について学会での具体的な確保対策の検討をいただけないかと考えています。具体的なイメージですが、中小病院や診療所勤務歴も専門医取得の研修歴に認めることはできないか。どれだけ専門医がいたらいいか、研修プログラム、認定方法、総合医の位置づけの検討など、こういったことを衛生部長会では議論しています。

 国への期待としては、こういう全体像について財政面も含めて多方面から支援していただくことと、先ほど冒頭でご覧いただいたように、医師数については面積割りでも人口割りでもかなりばらつきがあります。必須の医療機能というのはどういうところか指針を提示していただき、それに向けて整備を進めていくイメージを協議したらどうかと考えています。

○ 久道座長

 いま、いろいろとご説明いただきましたことについて、ご質問なりご意見がござい
ますか。

○ 小山田委員

この会議を設置すること、そしてなるべく早くやってほしいということを、私どもがいろいろと各方面からお願いして、こういうことになったという立場で責任もあります。というのは、先ほど来から共通したご意見が出ていますが、まず地域の医療が崩壊しつつある現実が毎日のように出ているのです。これに対して、すぐに手を打たなければならない。県レベルでやれればいいのですが、できない部分がいっぱいある。そうしたことを国として取り上げて早急な対策を出してほしいという切なる思いがあるのであります。

ここに中央会議の議題がいくつか並べてあります。これは当然必要ですけれど、基本にあるのは、いま国全体の医師の数の問題があります。各県ごとの問題はありますが、特に働き盛りの若い勤務医師が、地理的条件の悪い所からどんどん都会に行って開業するというのは、労働過重だからなのです。24時間働いても次の日に休みをとれない。月に最低5〜6回当直しなければならない。とくに私ども自治体病院が多い。1人とか2人でやっている所が非常に困っているのです。

その解決策として、例えば労働条件の改善と口で言っても、皆さん触れたがらないのです。労働法規を守れ、守らなければ罰すると言えない環境にあります。それはわかるのですが、そういう方々がどの程度までやれるのか、あるいは管理者がどの程度以上やらせたらいけないのか、そういう労働環境の改善策を討議の中に入れてほしい。

 もう1つは、医師も看護師も都市集中です。そうした都市への集中化に対する対応です。さらにもう1つは、先ほど言いましたように1人でその地域を守っているような、民間の施設もない所がいっぱいあります。全国で百数十カ所あるのですが、1人で地域の医療を守らせていていいのかという問題です。これを討論すること自身が、いま働いている人たちに対する心理的な支援になるのです。なるべく早く、そうした人たちに明るい道筋を是非つけてもらう会議の進行をお願いしたい。以上です。

○ 久道座長

 今の小山田委員からの提案は、3つの項目についての議題を、この中央会議で議論
しろということですね。事務局、よろしいですね。ほかに何かございませんか。

○ 松原委員

済生会ですが、冒頭のご挨拶で、いろいろと病院グループにおいては地域の役割などをどのように考えるか、そういうことをはっきり考えつつ、地域からの医師派遣等の協力にどのように応じることができるかということで、病院グループに対して大変期待をしていただいているということは光栄に思います。

病院グループはいくつかありますが、済生会について若干説明させていただきたいと思っています。済生会は平成18年度の時点で全国に92カ所の病院、診療所があり、その他、福祉施設等も合わせると約360カ所で持っています。社会福祉法人として、かつ公的医療機関として保健医療及び福祉サービスを複合的、総合的に提供して、地域の医療福祉の充実に貢献してきています。

また特色としては、済生会は無料定額診療というのを行っていて、最近行われた介護療養病棟の再編によって生じるであろう、行き場所を失った老人で、かつ医療費等が大きな負担となっている老人とか、あるいは近年は所得格差が増大していると言われていますが、そういった中で拡大しつつある低所得者層、無保険者など、制度の狭間にある人々に対して救済医療を行ってきて、地域に貢献しているという状況です。

済生会の病院は非常に多様で、超急性期型からケアミックス型、いわゆる介護療養型病床を持っている所、老人保健施設、老人福祉施設等を有したいわゆる複合型で、かつ地域での総合病院型、あるいは中小規模都市における地域の中核的な病院など、多様な規模、多様な機能を有しているわけです。したがって病床規模別に見ると、82のうち、400床以上が19施設、100床以下が8施設あります。そのほか55施設が100〜399床規模の間にほぼ均等に分布しているという状況です。

 人材確保の1つとして重要な点が臨床研修の実施だと思いますが、臨床研修指定病院は管理型が34、単独型が3、合計37施設あって、そのほか協力型が27、合計64施設が何らかの医師臨床研修に関わっています。後期臨床研修を行っている所は約40施設です。診療報酬の改定など、種々の制度改正や近年の医師不足、あるいは患者数の減、さらには公益法人や自治体等から医療機器運営費などの補助金を済生会は受けていますが、そういったものの先細りで経営は全体としては非常に厳しく、ここ2、3年は特に厳しくなっています。また経営の悪い所と良い所とが二極分化している状況にあります。とりあえず概略のお話をさせていただきました。

○ 久道座長

 関係団体の取組状況に入ってしまいましたが、戻って、先ほど中村参考人から説明いただいた全国衛生部長会の説明について、ご意見はございますか。また思い出したら聞いていただきたいと思います。関係団体の取組状況について、今日、資料をお持ちいただいている大橋委員にお願いします。その後、日本医師会の内田委員も何かありましたらお願いします。

○ 大橋委員

今日の資料は、全国医学部長・病院長会議全体の取組みというよりは、むしろ地方の1つの機関としての取組みという具体例で説明させていただくことで、ご了解いただければと思います。実は私、この5月から全国医学部長・病院長会議の会長を務めさせていただいていますが、所属は信州大学の医学部長を務めておりますので、地方にある信州大学医学部の取り組みの具体例を説明したいと思います。

ただいまご説明がありましたように、大学の中にも国公私立大学と3つあり、日本で80大学が医師の育成をしているわけですが、その存在する場所が地方にあり、1つの都道府県に1大学ある場合と、複数の医科大学が存在している地域では医師偏在等の状況にかなり違いがあります。地方にある大学は国公私立を問わず、その地域の医療の最終責任というか、高度医療センターとしての役割を果たすと同時に、本来の趣旨である質の高い国民の負託に応える医師の育成をする、国際的な研究をする、この3つの使命を負わなければならないということがあります。

同時に、国公立大学についてはここ1、2年、国立については2年前ですが、法人化というものが国立大学全部に入り、大学病院として経営努力というのを当然強いられています。それ故に国立大学の場合、従来は教育・診療・研究というのが3つの柱と言われてきたわけですが、大学病院においては診療ということに特化しなければならない。学部においては医師の育成という教育に特化しなければならないということで、多少、研究という部分において、国家的、将来的な禍根を残すような変化が日本全体の中で起こりつつある。こういう現状だけはご承知おきいただいて、地方にある1つの国立大学としての試みをご説明させていただきます。

先ほど、大学も少し地域医療に理解をというご発言がありましたが、長野県全体の医療機関というのは、先ほど出てきた厚生連、長野日赤医療団体、自治体病院、県立病院、国立病院等々があります。私どもは、実は2年前にさまざまな経営母体の違う医療機関、特に厚生連と日赤の医療団体の長野県支部、医師会と一緒に地域医療を考えようということで、医学教育・地域医療学講座という寄附講座を作りました。これは県からいただいたわけでなく、医療機関と大学の間で作った日本で初めての事例です。

その中で具体的に卒前教育、卒後教育について、初期臨床研修のたすき掛けを含めて教育しているわけですが、育成についてFD(Faculty Development)ということで、ともにどうやって医学生や医師を育成するか共通の話合いの場所を作ることができました。1夜泊のFDを年に1回ずつやってきております。経営母体が違う院長さんが、その地域の医療をどうするのか、さらにその医療を荷う医師をどう育成するのか議論するわけです。

病診連携や病病連携という中で、口で言うのは簡単ですが、実際に実質化するには、大学、地方の医療機関、自治体がどう役割分担するのがいいのか話し合う中で、いくつか面白い取組みが出てきました。1つの事例ですが、患者さんを紹介するといっても医師同士の相互理解がないと、病院に紹介するのもなかなか難しいということが出てきて、その医師の研修をどうするのかについて、CPCというものを材料に大学から資料を出し、さまざまな病院間の先生方が夜間に勉強会を始めました。あえて質レベルを上げるということではなく、病院間を介して研修ができるようになり、それが病診連携を進める大きな誘因になりつつあります。そういうのを地域の病院長先生方が集まっておやりいただいて、大学がそこへ協力するという形でうまくいっている事例であります。

もう1つは、女性医師の社会復帰というパンフレットで信州大学の実例がありますが、実は文科省のGP(Good Practice)事業の1つで、医療人育成へのGPというのをいただき、大学の中に地域医療人育成センターを作りました。基本的にいまの小児科、産科、麻酔科、救急の4診療科の偏在を、どうやったら解決できるのかについて、その寄附講座と協力しながら取り組む。同時に、最近は長野県医師会とも同じような試みがありますので共同事業として始めているところです。

特にここで大事だと思うのは、こういう支援を受けたときに、寄附講座というような地方自治体すなわち県レベルで協力する会ができていますから、そこで各論のテーマを議論すると非常に話題が集中して、ここのミニチュア版みたいなものが何個もでき上がるという形です。このパンフレットにありますように、従来、大学の持っている保育所、女性医師サポート体制を、大学ばかりでなく地域の医師会にも提供していく。あるいはワークシェアリングというか、大学から3人の女性の方を紹介し、働くのは週2日ずつで、ある病院の小児科を1週間責任を持つ体制を、大学主導型でその病院の地域でお願いしていく。

学生のレベルから、女子学生が20%ぐらいいますが、自分が医師としてのキャリアデザインをするときに、既に解決し得た問題点とか、ブレークスルーしている事例を選択授業という形式で、学生のうちから将来の問題点について考えてもらう取組みもしています。自宅に戻ってしまった方には、大学の医療人センターにお子さんを遊ばせる場所を作った中で、現実を見ながら社会復帰のための研修をつんでいただく。最後は県と協力して、県の施設で研修センターというのがあります。これは女性医師ばかりでなく、開業している先生方に高度医療を研修していただきます。医師ばかりでなく看護師の研修、すなわち女医と同じように社会復帰していただく看護師の研修をするなど、医療人研修センターというのを、県の施設を使ってやっています。その中で特に全く医療を中断していた女医の方の、また医師として現場復帰するための研修のプログラムなどを大学と一緒にやっています。

最後になりますが、地域枠入試というのを、推薦入試そのものとして導入したのは当大学が最初です。長野県は信州大学に入る県内出身者が11%で日本でいちばん低い大学の1つでした。そういう背景から、県の高校教育委員会と大学が入試の追跡調査をし、県内で約35名から45名、毎年全国の国立大学医学部に入っていることを認知して、その人たちをどういうふうに地域に戻すかという大きな戦略の中で、とりあえず信州大学としては10名の県内高校出身のみを対象として推薦入試という形で、県内枠の特別入試を始めたところです。

やった結果、非常に重要なことは、スーパー・サイエンス・スクールという文科省の事業がありますが、それと一緒に高大連携というのを行って、高校生のレベルから医師の本当の働く現実と地域医療の問題というものを説明すると、非常に大きな反響があって、そういうことにチャレンジしたいという高校生が非常に増えてきています。明らかに医学部志願者数も増えてきたということが、スーパー・サイエンス・スクールに見られ始めています。

同時に、そういう高校の校長先生と連絡することにより、運悪く信州大学に落ちた方で全国の医科大学に行っている方に、個人情報保護法に基づいてご本人の了解が得られればですが、信州大学医学部における取組みを紹介しながら、夏期休暇などで戻った時に、よその大学の学生なのですが信州大学医学部で研修してもらっていいことにしています。そういうことをして長野県の医療状況を説明しています。

 あるいは学外担任制と申しまして、仮に長野市という所から入学した場合には、長野の病院の院長先生に学外担任をお願いして、家へ帰った時に地域医療を見たり、自分の両親の医療相談まで院長先生に受けていただくことを始めたら、在学中から奨学金などない状況でも、地域医療に非常に関心を持ち始めました。そういうことを地域の大学としてさせていただいています。さまざまな問題点も理解したと同時に、今後、全国レベルで医学部として取り組んでいくような問題点についても、検討を始めたというところです。

○ 久道座長

 いまのお話に何かご質問はございますか。女性医師のワークシェアリングのところで、うまく弾力的に2人の女性医師が1人の常勤医師の分をやっているという話が、ここに書いてありますけれども、給料は半分ぐらいにするのですか。

○ 大橋委員

 これは医療保険と関係してくると思いますが、3人ワークシェアリングではなかなか1人の常勤医として認めてもらえないというところが、院長先生の苦しいところなのだそうです。そういうシステム上の理解もいただきたいと思いますが、当面は院長先生にちょっと色を付けていただいて、1人分の給料を3人で割るという形でやっています。

○ 中村参考人

 そのワークシェアリングの際に給与もあるのですが、福利厚生というか、いろいろな保険とかはどういうふうにされているか、もしわかればお願いします。

○ 大橋委員

 いろいろな形がございますが、ほとんどお子さん持ちということもあって、旦那さんの扶養に入っている場合の保険と、あるいはご本人が持っている保険とありますが、その辺は話合いのもとでこうするというのでなく、ご本人のご希望に沿っていく形でやっているわけです。こういう形がいいという例としては、まだまだできていないということが現状かもしれません。

○ 久道座長

 先ほど中村参考人の最後のスライドで5つの期待というのがありました。大学の期待、学会への期待、医師会への期待とかありましたが、医師会の立場で何かありますか。

○ 内田委員

まず最初に申し上げますが、この会議に出て来たら、この問題は医師不足なのか偏在なのか、医師会はどう考えているか必ず聞かれるだろうということで、実は昨日、役員が何人か集まって議論しました。その中での話では、ローカルな医師不足というのは全国各地で噴出している。これは事実としてあるだろうということ。ただ、その大きなファクターとしては、偏在が現状ではいちばん問題ではないか。まず偏在の解消に当たることが重要ではないかということ。

ただ、中長期的な話では、超高齢化社会、多死社会という問題があり、2040年ごろには30%以上の高齢化で、年間160万人以上亡くなるという中で、数字の上だけではそのころには足りるという議論で本当にいいのか。その時の医療提供体制がどうあるべきかということは、別の議論としてしっかりしなければいけないという話がありました。

この会議は、おそらく短期、中期の具体的な対応ということが話題になるだろうから、その中ではどういう対応をとるかということで、先ほどからいろいろ話が出ている集約化と、もう1つは偏在調整という問題だと思います。この偏在調整の中には、いま大橋委員からお話があった地域枠、奨学金、ドクターバンクなど、そういう偏在解消の対策というのがあるかと思いますが、そんな程度の偏在調整といった形で本当に済むのかなということで、もうちょっと深く踏み込んだ議論が必要になってくるのではないか、という個人的印象を持っています。

日本医師会としての取組みとしては、現在、高久先生が座長で久道委員にも入っていただいていますが、日本医師会の中に学術推進会議というものがあります。その中で、いわゆるかかりつけ医機能についての、これからの在り方ということを現在検討しています。この検討結果がそう先でない時期に出てくると思います。その中では、カリキュラムをしっかりしたものにして全体を底上げしなければいけないとか、あるいは日本医師会認定総合臨床医とか、かかりつけ医とか、そういうような形の日本医師会の認定制を作ってはどうかという議論も行っていただいています。

 その中で、かかりつけ医機能の拡充ということで一次救急であるとか、あるいは病院の外来機能といったところを、かかりつけ医のほうで担うといった方向性が、今後は病院勤務医の負担の軽減といった形からも、あるいは地域医療提供体制の機能分化と連携といったところからも、重要になってくると考えています。そんなところです。

○ 久道座長

 ほかに、武田委員、何かございませんか。

○ 武田委員

 全体でもいいですか。

○ 久道座長

 全体でもいいです。

○ 武田委員

全国厚生連の武田でございます。先ほど松原委員から地域の活動の例がありましたが、私ども33の都道府県で特に病院なり健診活動を行っていて、病院の数は123、診療所が58ぐらいあります。地域の医療活動を中心に行っていて、約7割が地方にあるということで、いま皆さん方からご意見がありましたように、本当に地域のドクターの数が少なく、現実に問題をたくさん抱えています。

そこで今回、厚生労働省が、こういう中央会議を開いて対策をやろうということは大いに賛成なのですけれども、これはポイントを見ると、いわゆるこの会議の中で都道府県ができないことを助言、支援、サポートしようという意図しかないと思います。これでは問題の解決にならないというふうに思います。もっと踏み込んで直接的に関わらないと、国として問題の解決にならないのではないか。都道府県の行政は相当努力しているようですから、限界が来ているなと思って、もっと踏み込んだ短期的対応も含めて具体的な対策が必要ではないかと、全体のポイントを通して感じているわけです。それと長期的対応の中で、ポイントとして医学部卒業者の地方の定着しかないということで、全然踏み込んでいないと感じています。

私ども地域医療は、慢性的にドクター不足ですし看護師も不足しています。その対策をということで、数年前からいろいろなことを要請したり要望したりしているわけですが、なかなか抜本的な解決にならない。今回、ようやく医学部の定員を増やすということの対応をとられたのですが、この数はゼロが1つ足りないのではないかと私は感じています。7、8年前に700人ぐらい医学部の学生を減らした結果、それは統計上は伸びているとなるのですが、臨床医が少ない。しかも地方に行く臨床医が少ないという構造の中で、もうちょっと増やさないと、地方に行く臨床医は増えないのではないか。完全に足りないという感じを受けています。こういった面の数をもう少し増やすべきではないかと思っています。

この席はドクターの皆さん方が多いかと思いますが、医学部を100人卒業して、100人がドクターとして適格かとなると、これは統計上から言っても実態上から言っても、私は北海道で実際に接してやっていますが、数パーセントはドクターとして適格でないというのが出てくる。いろいろな分野に対応するドクターが出てくるから臨床医が足りなくなってくる、地方の臨床医が足りなくなってくるという構図ではないかと思っています。そういった面を含めて、もうちょっとドクターが増えないと駄目なのだろうと思います。

厚生労働省は、ドクターが増えると医療費が増大するというふうな考え方が、今はどうか分かりませんが数年前から聞いています。私はドクターが増えて医療費が増大することはあり得ないと思っているのです。それは競争の社会に入りますから、当然、ドクターというのは待遇がすごくいいわけで、給与ひとつとっても北海道は4,000万円以上のドクターがいますし、東京は何百万という地域差があります。それはなぜか、いないから高くなるのであって、そういった面の経費が節減されれば、掛け算で医療費が増えるということはあり得ない。むしろ下がってくる。経済原則から眺めればそうなるのではないか。

もう1つは、先ほど適格者が100%ではないと申し上げたのですが、医学部を卒業しても、その時になって別の職業が選択できたり、対応ができたりという制度的なものも必要であったり、ご本人の判断で、そちらのほうに行くことも必要であったりということを考えると、もう少しドクターを増やしてもいいのではないかと思ったりもします。

 私の感じたことは、前段に申し上げましたように、もう少し国が踏み込んで具体策をやれるような対応を、今後、検討すべきではないかということです。そういったことをこの会議でやれるのかどうか分かりませんが、そういうふうに思います。

○ 久道座長

 ほかにございませんか。

○ 鈴木参考人(矢崎委員代理)

冒頭の局長のお話、あるいは衛生部長会の中で、同一系列病院への派遣ということが言われていましたから、国立病院機構における取組みとしてご紹介させていただきたいと思います。ご承知のように、国立病院・療養所が平成16年4月に独法化し、現在、150余りの病院になります。約3分の2が旧療養所で、残り3分の1が旧病院ということです。多くの旧療養所に関しては地理的にも医師が不足している地域で、筋ジスや精神といった特殊疾患をやっており、かつ地域医療を担っているという立場にある病院です。こういった病院は現在でも医師確保に困難を極めている現状です。

一方で、旧病院群ですが、これも必ずしも他の設置主体と比べて潤沢に医師がいない中で、先ほどの旧療養所の病院に対して、診療援助をできる範囲で行っています。行っていただいたドクターの報告を聞くと、派遣元の病院にとっては、診療体制を確保して医師が不足している病院に短期間行くということで、約1週間、場合によっては2〜3日という単位で、派遣元から派遣先へ行っているのが精いっぱいという現状です。

もう1つ、大きな問題として指摘しておきたいのが補助金の問題です。今日は総務省の方もいらしているかと思いますが、地方財政再建促進特別措置法、いわゆる地財特措法ですが、地方公共団体が当分の間、寄附金等を支出できない対象となっている独立行政法人として、我が国立病院機構も含まれているということです。現在、地方自治体から補助金、寄附金等を受領できないという問題があります。

 地域医療に貢献を求められている中で、民間病院であれば受けられるけれども、我が国立病院機構では受けられないという状態ですと、やはり独立行政法人の運営上、非常に大きな問題です。地域医療はより適切な対応が可能となるように、現行の地財特措法の支出制限は是非解除していただきたい、ということをお願いしたいと思います。

○ 久道座長

 その理由は、国立病院機構は公務員型だからという理由ですか。大学は地財法の解釈の中で寄附はできているのです。

○ 鈴木参考人

 そうですね。法律の中での議論でここでは馴染まないのかもしれませんが、現実問題として補助金が受けられない状況にありますので、現場を担っている病院群としては、他の設置主体では受けられているものを、国立病院機構でも受けられるようにしていただきたいという思いがあります。

○ 総務課長

 予算の関係でしばらく席を外していて、途中を聞いていませんので恐縮ですが、いまの地財特措法の関係です。国というか国みなしの法人も含めて、ですから国立大学法人もそうだということです。寄附講座みたいなものは例外として認められているのですが、それ以外のものについては大学法人も、たしか地方財政再建の政令で、寄附、補助といったものは公共団体は出せない、また受けられないという格好になっているかと承知しています。

○ 久道座長

 わかりました。地域医療でいろいろ貢献している自治医科大学で、何かご意見があろうかと思います。

○梶井委員
皆様には日ごろ卒業生が大変お世話になっています。自治医科大学最初の卒業生が出てから、いま29年を迎えています。そういうような背景で私たちは普段、いろいろなことを考えていますし、全国の地域医療を見せていただいている立場にあります。そういう中でいろいろなことを考えますが、自治医科大学の卒業生の現状をまずお話しておきますと、義務年限というのがあります。学生在籍期間の1.5倍ということですから9年間ということになります。9年間は研修期間も含めますが、知事の指定する医療機関に派遣ということになっています。いまは義務年限が明けた卒業生が2/3になっているという状況です。

義務が明けてどのくらい県に残っているのかというと、約7割です。いわゆる過疎4法で括られるへき地と称される所に残っている卒業生が3割となっています。この数値がどうかというのは皆様の評価にお任せしたいと思いますが、少なくともいろいろなことをやってきました。

卒業したといっても大学は一人ひとりを見守っていっています。ちょうど私の身分というか、いま入っているのが卒後指導委員会で、全国の卒業生一人ひとりを見守るような体制ができているということです。卒後指導委員は各県の中にも任命されていますので、全国のネットワークができているということです。卒前卒後の教育に関しても、県と相談しながらいろいろやらせていただいていますが、各県に臨床講師地域担当の教員を配置しています。こういう全国47都道府県を結ぶネットワークができているということです。卒業生を支援するために地域医療支援部門というのが設けられています。この地域医療支援部門も含めて、地域医療についてさまざまなことを検討しようということで、地域医療学センターが設置されて8つの部門があります。こういうようなことを、いろいろこの30年近い間にやってきています。

こういうことで全国の様子を見てみると、先ほどお話がありましたように、医師の偏在をどういうふうに調整するかが1つ大きいと思います。それと、これは医療に携わっている医師をはじめ関係者と行政の問題のように捉えられますが、もう1つは需要と供給という問題が非常に大きいと思います。いま、医療の流れが果たして日本の中ですっきりいっているか。患者さんは一次医療機関と同時に二次、三次といろいろな所に行かれます。果たしてそういう状況で、この需要と供給のバランスがどうかということを考えていく必要があろうかと思います。その際に、先ほど内田委員からもお話がありましたように、最前線の医療を守っていくプライマリーケアをどう育成していくか。これも非常に大きい問題だろうと思っています。

 そういうようなことを考えながら、いま、我が国の医療の問題点を考えると、大病院志向、専門医志向というのは非常に根強いものがあります。医療提供体制も、どちらかというと専門医医療に偏った医療の提供体制になっているのではないか。その一方、プライマリーケア体制がまだまだ未整備であるということ。こう考えると、専門医はいまの研修体制でいいのか、認定体制でいいのかということは考えていく必要があろうかと思います。いまは専門医になる人たちは自由に選んでいるわけです。その中で果たして分野ごとのアンバランスが起こっていないかどうか。そして総合医、プライマリーケア医はどのくらいいればいいのか。そういう検討も行いながら、この会議を進めていかれればと思っています。

○ 山田委員

団体としては最後に日赤ということで、取り組んでいる状況をお話させていただきたいと思います。日赤は全国に92の病院があり、6,500名の医師を抱えていますが、この4月の調査で3分の2の病院が医師不足で、437名が足りないというデータが出ました。それが新聞に漏れて皆様にかなり衝撃を与えたということがあります。ただ、この数字は勤務体制上で医師が足りなくて十分な医療提供、あるいは経営に大きな影響を与えているということで出ている数字で、決して法律上で医師が足りないということではありません。

ただ、そうは言いましても、特に北海道や東北、病床数で言うと300床以下の中小病院が医師不足に大変苦しんでいるのが現状です。原則は各病院が自主独立ということでやっていますから、院長、各診療科の部長が医師確保をするのが原則になっていますが、本社としても手をこまぬいているわけではありませんので、いくつかの方針を立ててきました。今後、病院のグループとしていくつか参考になることがあるかもしれませんので、お話をさせていただきます。1つは医師支援拠点病院というものをつくり、そこに全国の病院から収益に応じて一定ずつ拠出していただいている資金の一部を使い、医師を少し余分に雇ってもらうことにして、その余分に雇った医師を足りない所へ出そうということです。ただ、なかなか応募してくださるドクターがいませんので、そうたくさんというわけにはいきませんが、いま数名を全国に派遣しています。

もう1つは、退職医師の登録制度というものを作り、日赤の場合、医師の定年は65ですが、60ぐらいからいろいろとお願いして、65を過ぎてもどこかで働いてもらえないかということで登録制度を作り、それに登録していただいた方を改めて小さい病院へ派遣させていただくという方策をとっています。

もう1つ、これは今からスタートするところですが、武蔵野日赤の三宅院長が考え出した方策で、現在、初期研修医は地域研修を保健所でやっていますけれども、これを地方の小さな病院でやらせたい。そのためには研修医だけ出したのでは駄目なので、指導医を1名、あらかじめ1年なり2年出しておいて、その下に研修医を交替で出そうという形で、いま始めようと考えています。この指導医の問題、医師を少し余分に雇っていただくという問題などは、病院の医師に余裕がないとなかなか難しいわけです。いまの診療報酬下で赤十字も3分の2の病院が赤字になっていますので、なかなか厳しい状況ではありますけれども、何とか努力して小さい病院を助けていこうと考えています。

 中長期的には、先ほどお話に出ましたように初期研修体制、後期の研修体制、女医に対する体制など、こういったものをやっていかなければいけないと思います。先ほど梶井委員から出ましたように、専門医の数は本当に本人が希望するような形で応募するというように、放任したままでいいのかという問題と、もう1つは、本日、内田委員が出席されていますけれども、病院と診療所との診療報酬の格差というところを、もう少し病院のほうに有利な形で今後、展開できないだろうかということを、長期的な展望としてお願いしたいと考えています。

○ 久道座長

 時間がそろそろ迫ってきましたが、最後に発言のなかった近藤委員からどうぞ。

○ 近藤委員

千葉県の病院事業管理者の近藤です。私の所は7つの県立病院の事業管理をしていますが、その立場とは別に、いまお話を聞いて思ったことを少しお話させていただきます。

医師の不足か偏在かというよりは、医師の初期研修の制度運用と後期研修先の選び方を見ていると、医師の就職市場が自由化されたということの認識が重要です。自由化されたことによって偏在が目立ったのだろうと思います。もちろん偏在が目立ったことによって、もともと足りなかったのではないかというご意見もありますが、私の考えは、労働力が自由化された市場では失業が生じても偏在は起きています。ですから、本当に医師を自由市場に置いた場合には必要な労働人口というか、理論的必要数よりは少し多く置いておかない限り、偏在はたぶん解消しないのだろうと思います。素人の考えなので、いずれその辺は厚生労働省の専門家にお話をしていただきたいと思います。

こちらに看護職員確保対策官がいらしていますが、ナースの場合には有資格者数ということでは足りているはずなのです。ただ、数は足りても勤務者数が足りていないので在宅の人をということで、もしかしたら看護師のほうが、医師のワークシェアリングよりよくできているのではないかと思いますが。もし医師もワークシェアリングをすすめるとするならば、参考になるのではないかと思います。

ただ、私はここで偏在か不足かということより、どうやったら偏在が解消できるのか、少し例示をしてもらえないかと思っています。そのいちばんいい例が産科だと思いました。先ほどの中村参考人からの話も産科の話ですね。医療法の事務局から出していただいたのも産科の数です。これを見ると出生数1,000あたりの産科医の数は、9.3、9.4、9.5とほとんど変わっていない。急にここ2、3年、産科医が減ったわけではない。たしかに2年間供給がなかったということはありますが、それは産科医師総数にはそんなに大きい影響ではない。なのに影響があったということは、まさに偏在が起こったからだと思います。

一方で、産科医は1病院3名以上が望ましいという意見があります。私がざっと計算すると、人口5万人ぐらいに産科医が3人いる病院が一つはなければいけないぐらいの数になります。それがなぜできないか。それができれば偏在は解消します。

 ところが、中村参考人の資料を見てもいろいろ難しいという話です。産科医の絶対数はいるという数値が出ているわけですから、なぜ集約ができないのだろうかということです。小児科医のことを私が言わないのは、小児科医は内科・小児科という標榜があるため供給力がはっきり出ないからです。内科医で小児科をやっている医師はいますが、産科は産科医しかしませんから供給力がはっきりしています。産科医をテーマにしてそういう問題を考えると、市場の自由化によって偏在が目立ったことですが、場合によっては産科医の数をもっと増やさなければいけないという議論が出てきて、それは他の診療科目にも使えるのかもしれないと思いました。

○ 久道座長

 予定の時間は過ぎていますが、今日は審議官が出席されていますので、何かござい
ましたら最後にお願いします。

○ 審議官

本日はお忙しいところ、ご参集いただきまして本当にありがとうございました。私どもにとっても厳しいご意見があるかと思います。予算の説明の中で40億円を100億円にしたということはひとつの姿勢ではありますが、ご指摘のとおりこれは単なる始まりにすぎないわけです。皆様方の知恵と力もお借りしつつ、国としてもうちょっと県をサポートしていかなければならないと考えています。中村参考人のレポートにもあるように、国をはじめ多くのステークホルダーと言いますか、学会、医師会、病院団体、大学、都道府県自身、そういった所が取り組まなければいけない課題だと思っています。

また、いろいろお話を伺って思いましたが、今の医療の状態になるのには、医学生あるいは医師の側にもそれなりの理由があり、最後に近藤委員が言われたようなこともあるだろうし、また患者さんの行動ということにもいろいろ理由があるかと思います。何人かの方が看護師のことも例示されていましたが、確かに看護師についても自前で養成されている所がある一方で、全国的に募集している所もあるということ。学生あるいは患者さんにしても、あるいは看護師を募集する所にしても、それなりの理由があってやっているわけですけれども、その一方で、大量に看護師を募集することには何らかの自粛要請があって然るべきだという声もあったりします。

それぞれのお立場で、いろいろ難しい課題はあるかと思いますが、皆様方の協力なくして日本の医療というのは成り立たないわけです。今回、いろいろご指摘をいただいた点を、次回はできるだけ具体的な数字を基に、またご議論させていただければと思います。そういった意味で、全国展開されている団体でいろいろなデータをお持ちでしたら、実態がこうであるとお示しいただければと思います。

 私どもはオールジャパンの数字だけでなく、一部医療圏レベルに下りた数字も披露させていただきました。これはある時期での輪切りですので、ご指摘があったとおり、ここに来て急に勤務医が本当に増えているのか。あるいは都市のほうに移動しているのかというあたりも、もう少し勉強してデータをお出しできるように、一つひとつやってみたいと思っています。本日は本当にありがとうございました。

○ 久道座長

 ただいま審議官からも話がありましたように、本日の中央会議は国あるいは都道府県の取組状況を中心にご議論いただきました。また委員の方々から、この会議で取り上げるべき課題というか議題の提案もありました。次回はもう少し具体的な好事例等の紹介などもしながら、議論を深めていきたいと思います。事務局から今後のスケジュールについてお願いします。

○ 指導課長

 今後の予定ですが、まず内容です。ただいま座長からもお話がありましたように、本日、関係団体等から取組みをご説明いただいたわけですけれども、次回以降も引き続き、関係団体の取組状況を少し掘り下げてお願いしたいと考えています。また日程につきましては、希望だけで申しますと年度内にもう1回ぐらい予定していますが、何分お忙しい先生方が多くおられますので、もしかすると年度をまたぐかもしれません。そのくらいの時間感覚で次回を開催したいと思っています。よろしくお願いします。

○ 久道座長

 これで本日の地域医療支援中央会議を終了します。ありがとうございました。
                                  (以上)

照会先:厚生労働省医政局指導課 
    計画係(桑原)、指導係(舘田)
電話 :03-5253-1111 (内線2557)