2007年8月奈良県妊婦救急搬送事案調査委員会(第3回)審議内容

知事 今回は資料3にある、一次救急体制の考え方を中心に議論願いたい。

これまでの議論で産婦人科の一次救急体制の整備が一番の課題とわかってきた。現状は資料のとおりだが、今後の改善を各病院にも打診しているので、病院に検討状況をお伺いした。県は費用負担をさせていただく。
○○委員 県内で2地域が理想だが、全県で1つの広域にすれば良いのでは。
○○委員 今日の資料で何点か確認したい。まず、消防が代理ばかりだが、真剣に考えているのでしょうか。代理者はこれまでの議論を把握しているのか。
○○委員 消防長は以前から決まっていた会議が重なったため。代理となった。
知事 消防は病院長の権限と違い組織的な面があるので、代理出席で対応できると思う。
○○委員 医師会へは話が通っているのか。
事務局 医師会へも話をしている。
○○委員 市立奈良病院の輪番は、医大の医師が担っている。場所は市立奈良病院だが、医大のスタッフがやっているという事は理解されているか。
知事 理解はしているが、実際に診療している場所は、奈良市立言うことで資料を作成してある。
○○委員 西宮の在宅当番制の医師の数は分かるか。医師一人の病院もあるのか。
知事 一人の病院もあると聞いている。
(事務局より各診療所の医師数、ベッド数を報告)
○○委員 県から依頼があり、院内で検討したが、病院の医師数が定員8人のところ4人しかいない。また、婦人科の手術が非常に多い。夜間は1名の当直なので対応できない場合、二次三次の病院で受け入れて欲しい。極限での診療で医療事故も懸念される。婦人科はともかく産科は分娩予約が殺到している状況。また、NICUもなく異常分娩には対応できない。分娩希望があればその日は診るが、その後は他院でお願いしたい。救急外来をすると当直でなく夜勤業務となり、翌日の勤務する医師の確保を是非お願いしたい。こういう条件がクリアできれば協力したい。できれば近大のように婦人科を診察するという事でお願いしたい。
○○委員 当院は県立病院なので何らかの協力は必要と考えるが、二人の常勤医と医大から当直など二人パートで来ていただいているが、それでもフルで当直できていない状況。大学及び現場の医師とも協議したい。
○○委員 過重労働で産婦人科医師二人が訴訟を起している。このときに輪番制、開業医の出診など対応策を県に提案してきた。そして当院は二次三次に集中し、一次は受けないと言ってきた。今回また、当院に一次を再度要請という提案があり驚いている。当院は二次三次に集中してやりたい。
知事 これは県がアイデアを出した。断るというのであれば、今回あらためて断られたと県民に発表したい。皆さん医療関係の方ですから。断るのであれば、奈良の一次救急をどうすればいいのか考えていただきたい。一次救急がなくて良いと考えるものはいない。個別理由を説明するだけでは、奈良県の医療は確立しない。全体の利益を言っていただきたい。
○○委員 一次と二次・三次を分けて考えなければ、今までの議論は二次・三次でやっているところも一次となっている。それでは現場は持たない。二次救急のところへ一次を押し込んでもうまくいかない。一次救急はどのレベルの医師で受けるのかということを議論すべき。
知事 専門家の皆さんから、一次救急はこうすべきという意見を言っていただきたい。
○○委員 病院が一次救急をしたくないと言う気持ちは分かる。しかし奈良県内で生じる一次救急患者は奈良県内の医師が担わなければならない。奈良県で生じる妊婦の位置次救急に関しては県内の産婦人科医が均等に担うべきだ。県内に74人の産婦人科医がいるとすれば、74分の1ずつ担う姿勢こそ重要である。個々の診療所でもいいし医大に来ていただいてもよい。ただそれに見合う財政負担を県は見て欲しい。これまで、県は一次救急は県は知らないという姿勢があった。

医大の35才から40才の医師は、平均二人の子供を持っているが、わずか年棒600万で、必死に一次から三次の患者を診ている事を知ってほしい。財政負担をきっちりしていただくことによって、産科や救急科、脳外科など忙しい診療科を辞める人が少なくなると思う。
知事 財政負担はすると言っている。どんな負担をすればいいか具体的に考えて欲しい。もっと危機感を共有して欲しい。
○○委員 一次は74人のうち二次三次を担当している者をのぞいた者が担当すべき。具体的には開業されている医師、婦人科だけの病院の医師になる。ただ、今日は、何人の医師が協力できるかという資料がないので決められない。また、例えばコーディネーターに看護婦でいいとか、いくらの報酬でいいとかではなく、きちっとした経済的負担をしていただければできる。
知事 負担をすれば、責任を持ってできるといえますか。具体的にどのくらいでなければ医師は集まらないとか言って欲しい。
○○委員 一次救急をやっている内科とか外科などと同様に考えているのか。また、コーディネーターの報酬が少ない。
○○委員 奈良の現状は県と産婦人科医会のコミュニケーションがうまくいっていない。そこは改善すべき。

一次と二次を分けて考える必要があり、議論がごっちゃになっていると思う。二次三次やっている医師は一次救急から外れるのは原則。先ほど知事が言った負担額の参考に、大阪の小児救急の夜間は19万円で受けている。

私は、開業の医師が在宅で一次救急をしてくれれば良いと思う、看護婦いなくても、そこでコーディネーターに連絡してどこかでみて欲しいとなる。そこにコーディネーターが必要となる。そういう意味で一次救急を気楽にとらえて欲しい。重症の患者ばかりでない。その中で重症の場合と判断して割り振りするのが一次の役割。
○○委員 本来は一次は診療所でやるのが理想だが、現実として今の体制のの中で、近大は火曜日の産科を受けさせて頂きます。
知事 やっと体制整備のポジティブな意見を頂いた。開業医の意見はどうですか。病院は二次三次という意見だが、受けられますか。
○○委員 この問題は長い間引きずっている。県立奈良病院の訴訟は、シンボル的な事象。開業医の消極的な理由は、高齢化していること、夜がいやで婦人科に回っているので人生設計を変えたくないとの意見。希望があるのは、分娩を扱う診療所で、ここにはスタッフもいるし二次に近い処置おできる。しかし、療養環境を崩したくないと言う問題や、分娩予約を受けている責任がある。開業医にも色々な事情・考えがある。

また、これまでの経過から県に言っても無理だと思っている。奈良市では思い切った投資をして休日診療所をもっている。それでも小児科医が少ない。高齢化しているなど問題がある。

11日の産婦人科医会の総会に、医師が集まるので、その場で県から直接説明していただこうと思っている。そしてやれるところからやっていこうと思っている。
知事 厚労省から何かないですか。各地の情報などありませんか。
厚生労働省 国では医師確保支援チームとして、各ブロック毎に相談に乗る体制は整備している。現在、緊急臨時的医師派遣としていくつかの道県へ医師派遣を行なっているが、それはその地域の医療資源をフルに活用してもやって行けない地域にしている。

奈良県は全国的にみると、まだ医療資源を総動員する余地があるのではと考えている。関係者一丸となって取り組んでいただきたい。また、コーディネーターを募集しているが、助産師資格を持った人で応募者がいるのかと思う。公的病院に助産師資格を持っていても助産師業務に携わっていない者もあるのではないか。地域の医療機能を評価すれば、新たな面が見つかるのではないか。
知事 医療資源は医師が重要となるが、奈良はまだ余裕があるという意見か。
厚生労働省 まだまだ活用の余地があり、最低レベルでないと言うこと。一人で300件の分娩を扱う例もある。
知事 数はいるけど、働きがシステムとして十分でないと言うことか。
○○委員 一人医師で300分娩扱うのがいいとは思わないし、医者がいないから助産師でするのが必ずしも正しいと思わない。奈良県で医師がいないであれば、確保するために大学で養成するとかがあるが、現実には72人で県民の命を守るのにどうするかを議論しないといけない。

一次救急の絵を描いてスタートしなければいけない。できないから大阪でとなれば話にならない。それは産婦人科の先生方で話し合うべきこと。
○○委員 11日の会議で話し合うことになる。今決められるのは二次以降は病院でみるので一次ははずしていただくということで、産婦人科医会で話し合っていただいて、何人協力できるか、そして何人患者がいて一人あたりどれだけの負担になるかシミュレーションする必要がある。
知事 今日、実質的な意見を聞いて、作業部会でするという提案をしているわけで、このままでは作業部会もできないような印象を持っていた。
○○委員 奈良県の産婦人科の問題もある。かかりつけの患者でも診ないところも多々ある。5時以降連絡のつかない病院もある。また未受診の妊婦が保健所へ相談に行くと、とりあえず1回医大で診てもらったらと指導するところもあり困る。国でも妊娠中に5回は受診すべきと措置されている。1回だけ受診して、飛び込み出産する人もいる。妊婦への啓発はとても重要で、東京では安易に救急車を利用しない、かかりつけ医を持つなど啓発が盛んに行なわれている。もっと県民に対しアナウンスすることが重要だ。
知事 本当に医師数が足りないのであれば大変だが、今は最適活用が緊急の課題。県はどんな役割ができるのか。どのようにやればいいか考えて欲しい。
○○委員 一次救急をすると、どれぐらいの医師の負担になるかだと思う。
○○委員 資料4ページにあるが、年間1000件程度。
○○委員 中南和の病院の産科は実質崩壊していると言って良い。中南和だけで一次体制は無理。県で2ヵ所が理想であるが、現実的にはスタッフの問題で無理だと思う。従い、とりあえず一ヶ所でスタートする体制を作るべきである。一ヶ所でも搬送に問題はないと感じるが、消防の方に意見を伺いたい。日に3件程度であればそんなに負担が増えないのではないか。県負担が一日19万円が適切かどうかは別にして、病院は二次三次を担当するのが役割なので、一次は産婦人科医会にお願いし体制を作っていただきたい。
○○委員 かかりつけがあればそこへ連絡する。そこがだめなら救急医療情報システムのみ。また病院転送も多い。かかりつけ医をもっていただくことが重要だと思う。
○○委員 婦人科の医師でも産科の一次は十分出来る。東京のある病院は地域の開業医が来て一次救急の対応をしている。
○○委員 西宮市の例でも、分娩していない病院が入って一次救急をしている。婦人科でも十分可能だと思います。
○○委員 西宮市では市がどれだけ負担しているかわからないが、西宮は兵庫県内の大学からアルバイトがきているのでは。19万かどうかわからないが、きっちり県が負担の約束をして話を進めてほしい。
知事 19万は高くない感じもする。県内の病院で25万(24時間で)と聞いた事もある。

また、一次二次三次分けるのも大事だが、連携が重要と考える。連携できていれば一次の開業医の負担も少なくなる。とりあえず診療所で診てもらって救急車がそのまま待機し、患者の状況を確認して必要ならまた搬送しても良いと思う。一次か二次か診ないと分からないときのシステムを作る必要がある。
○○委員 未受診の妊婦をどうするかが大きな問題。検診1回に1万年程必要となる。厚生労働省から来ていただいているので、保険適用を検討いただきたい。お金がないのでということで新生児放置された例が2年続けてあった。
知事 未受診なくすのも重要だが、我々の課題は未受診妊婦が来たときのリスクを減らすこと。未受診妊婦はどこも受けないでは問題。歓迎はしなくても受けるのが医師の仕事。一次では受けないということではないと考えてよろしいですね。
○○委員 一次で診れないときには二次三次に回す対応がコーディネーターの役になるが、そのコーディネーターが助産師・看護師で本当にいいのか。
知事 コーディネーターが医師以外と決めたわけではない。医師が望ましいが医師確保は難しいということで助産師等になっている。医師が確保できるのであれば出診して欲しいということでこの案になった。医師が確保できるのであれば、出診してコーディネーターをやっていただくのが良い。報酬も医師は想定していない額になっている。
○○委員 これは医師がすべきもので、それに事務職がついてくれると助かる。現実に大学では二次三次を診て、さらに経済的サポートもなく一次もしているなかでコーディネーターもするのは負担となっている。一次を切り離してもらえれば、大学の中でもできる。
知事 議論の中でコーディネーター機能が進化している。一時、二次のスイッチができるコーディネーターに医師が入ることにより、より高次のコーディネートができることになる。
○○委員 これまでは、大阪へのアプローチが手当たり次第という格好になっていた。コーディネーターがいるとOSCGが介在し可能性のあるところから順番にいくので迅速になる。
知事 今日の議論を踏まえると、一次救急でリスクが高くなった時にコーディネーターが受け皿になりうるという気がする。そうであれば、大変意味のある投資だと考える。
○○委員 コーディネーターの報酬は、大学に入るのではなく産婦人科医に入るようにしてほしい。
○○委員 当院では年間60件大阪のお世話になっているが、NICUが一杯で取れないのが理由。後方ベッドを整備すれば60件は取れる体制になり、整備を県に提案している。
知事 NICUが後方ベッド的に使われていることは医大でも伺っている。奈良県の本格的な総合周産期医療体制を分散がいいのか集中がいいのかなど検討し年内に基本構想を作りたい。そして来年度予算に反映したい。二次三次が整備されれば、他県搬送が少なくなり、一次も安心できる。
○○委員 平成18年のワーキング資料では、MFICU27床、NICU119床が後方ベッドを入れて必要とされているが、現状はかけ離れている。一次体制ができコーディネーターがいても、この整備がなければ大阪に行かざるを得ない状況。できるだけ早く整備をお願いしたい。
知事 来年度の予算に入れる考えであり、2月の当初予算に間に合うように基本計画を作りたい。関係者に集まってもらいシステムの構築を図っていく。
○○委員 次の産婦人科医の総会に知事行かれてはどうか。
○○委員 是非来ていただきたい。
知事 万障繰り合わせて行かせてもらう。
○○委員 コーディネーターはやはり専門の医師が望ましい。しかし過渡的には助産師が医師と連携するのもやむを得ないかと思う。資料1の2のAにあるOSCGの拠点病院とはどういう意味か。
○○委員 大阪でも病院を探すのに、ここ1年は1ヵ所目で25%、2ヶ所目28%で、あとは3ヶ所以上かかり、1ヵ所で15分くらい必要。5年前は1ヶ所か2ヶ所で病院が見つかっていた。

大阪でも受け皿が不足している。後方ベッドも含めて整備する必要がある。出生1000件あたりNICU2床というのを見直し、NICUが足りないのでもっといるということをしっかり議論する必要がある。
知事 病診連携の中で、病院の検査機器は開業医にも使ってもらえるシステムにならないか。また救急患者が出診した先生のかかりつけ患者にならないかと思う。
○○委員 婦人科では超音波機器が重要だが、県立病院ではなかなか更新できない。使いやすい機器を是非整備していただきたい。
知事 そのようにオープン化して使えれば機械の投資も意味があるので、病診連携を考える参考にしていただければと思った。
○○委員 現実に我々は多くのハイリスクの患者を診ているが、他科とも連携して母体胎児を受け入れているので産婦人科だけではない改善を要望したい。
知事 開業医が大学にいってチームに入るという連携はとれないのかなと思う。
○○委員 セミオープンシステムというのがある。医療資源の有効活用の手段だが、送る側と送られる側のコミュニケーションの問題などでなかなか普及しない。
知事 時間もせまっているのでまとめたいが、最大課題の一次救急体制の整備は作業部会で検討するでよろしいですか。次回はその進捗と、報告書のフレームについて議論したい。報告書への意見はまたメールなどで言って下さい。
○○委員 基本構想作成はまた別のところでの議論か。
知事 はい。
○○委員 資料3Pにある救急搬送の現場30分以上の件数が奈良県は特に多い。消防の対応も含めて検討する必要があるのではないか。妊婦検診について、市町村の公費負担の奈良県の状況はどうか。産婦人科医師の苦労も分かるが、是非とも協力をお願いしたい。
知事 救急隊が現場で30分以上かかることが多いのは課題。妊婦検診について、市町村に5回分の交付税措置があることについては議論していたが、この会議に市町村がいないので遠慮した。次回には市町村の実施状況の資料を出す。
○○委員 交付税を他事業に回している場合もある。県から市町村に働きかけて、妊婦検診を受けていただけるようにしてほしい。
知事 未受診妊婦解消の大事な要素なので次回に整理して提示したい。

それでは、今日は有り難うございました。希望を持って次回の会議に挑めると思う。また、記者会見でもそのように報告させていただきます。